RtoS研究会の視点(上)

「EUと日本の廃電池に対する取り組みの比較」

R to S(Reserve to Stock)研究会の役割のひとつは、適正な資源化を達成するための「蓄積・集積」について考えてみることです。

集積後においては、運送効率・処理効率の向上などが期待できることは言うまでもなく、混合品などについては分別やDe-pollution(循環に対する忌避物の除去)などを行うことができることから、資源化促進のために「蓄積・集積」は必要な手段です。

今回、廃電池を二次資源として考えた場合により良い方向性を考えていくことを目的に、エリア全体で廃電池の管理に関する決まりを有しているEUの関連法規(廃電池指令:Battery Directive)とその評価レポートを検証しました。

EUのBattery Directiveにおいては以下のような考え方の特徴があります。

  • 目的は各国の法律を一致させることであり、同時に廃棄電池の環境影響を最小とし、市場全体に悪影響を与えない。
  • 有害物質の管理に焦点がおかれている。
  • 全バッテリーを対象として制度を構築した(ただし電気自動車の牽引用蓄電池は除く)。
  • 実行するための経済的措置も併せて対応してある(拡大生産者責任(EPR)など)。
  • 回収促進のための制度やエンドユーザーの役割なども考慮している。
  • 他の指令等法制度との整合性、加盟国の実施状況に応じて見直しが常に考えられている。

一方で、日本の廃電池の処理方式は欧州のそれとは異なっています。

  • 電池の種類によって対応する団体や主体等が異なる。
    乾電池(自治体)、ボタン電池(BAJ)、二次充電池(JBRC)、産業用鉛蓄電池(BAJ)、自動車バッテリー(SBRA)、その他産業用電池(排出者など)。また、ベースとなる法律も一律ではない。
    ※BAJ:電池工業会、SBRA:鉛蓄電池再資源化協会
  • 回収に関する仕組みはスキームごとに異なっており、回収目標も特にはない。
  • 個々のスキームの有害物質管理は廃棄物処理法で対処されるが、使用後から一貫した有害物質管理のコンセプトがあるわけではない。
  • 一貫してシステムを運用していくという思想での経済的な仕組みはなく、個別対応が主となっている。

一般に、先進国においては廃棄物に関わる制度の基盤整備が1970年前後に開始され、歴史・文化や地勢・気候などが考慮されエリアにより異なるものとなりました。EUでは連合体となった1990年代以降、EU委員会が決定した法律や指令にしたがって各国が基本的に同じ方向へ動くようになっています。

大型の蓄電池などを除く可搬型電池や電池を含む製品は、ほとんどが廃電池指令(Battery指令)と電気・電子機器の廃棄物指令(WEEE指令)で扱われています。そのシステムは各国それぞれの統括機関(PRO)の管理のもと、住民が地方自治体の設定した収集箇所まで持っていき、EPRの費用も使いながら運搬・処理がなされています。

一方、日本では、先に示した電池関係の仕組みのほか、小型家電リサイクル法などが関与しますが、EUと比較すれば運用方法は個別のセクターで収集費用もまちまちであり、全体の統一感はないのが現状です。

今回のEUでの自らの評価に関して、以下のとおり多くの問題が指摘されています。

  • 目標とした45%以上(2016)の回収率を達成しているのは加盟国の半分に留まる。
  • 自治体における廃棄物フローの中で不明となる電池量が把握できていない。
  • 回収量を増やすためにはラベル表示(種類など)だけで有効とは言えない。
  • 電池全体をカバーしているが、当初は鉛蓄電池とニカド電池、乾電池で開始されたため現状では多くの齟齬が生じている。
  • 例えば、新たな電池であるリチウムイオン電池(LiB)などにリサイクルの考え方や高度な素材回収の目標などの設定がない。
  • リサイクルによる回収素材価値が処理費を上回る場合が多く、仕組みをしっかりしていくことが必要。
  • 他の指令との整合性に関しては、廃棄物枠組み指令(WFD)の廃棄物ヒエラルキーが反映されていないことや、WEEE指令や使用済み自動車指令(ELV)などとの整合性をとる必要があることなどが指摘された。
  • 例えばLiBの取り扱いに関するリスクの問題等は有害物質管理と同様に配慮する必要がある。

EUと日本の廃電池に対する取り組みを比較してみて、制度の範囲や有害物質管理の考え方、回収スキーム、費用の問題などパフォーマンスが異なるものが多いなか、回収率の向上や他の制度との整合性、様々なリスクへの対応など、日本と同様の課題があることもわかりました。日本の回収率がEU諸国に比べて劣るであろうことは指摘されていますが、課題自体は同じで、どちらも進むべき方向性に関して大きな違いはないと考えられます。

活動内容

◯下記の欧州委員会の文書を翻訳しました。また各文書に対する研究会の視点を掲載しました。

・エコデザインに関する新たな規則案

・電池指令(研究会視点 


勉強会・総会等