2000年に循環型社会形成推進基本法が成立したことにより、我が国のリサイクル事情には大きな変化が訪れている。この基本法の概念として重要なことは再生資源利用法と廃棄物処理法を合体したパラダイムの変換が行なわれようとしていることである。法では循環型社会を定義し、「廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置付け、その循環利用を促進することをうたっている。その他の法整備も加え、リサイクルを行いうる環境は徐々に整備されてきていると言える。
その後、同法に基づき個別のリサイクル法が制定され、リサイクル環境は現実に促進されつつあるが、現在の個別のリサイクル法(家電、自動車、容器包装など)は、廃棄物の削減を目的とし廃棄物処分場の枯渇に対する対策といえ、この点では一定の効果を得ているが、資源の循環という点では多くの課題も残している。例えば、我々が目的とする金属資源の問題からすれば、我が国の産業維持に不可欠なベースメタルやレアメタル類がクリティカルメタルとして枯渇や供給不安が叫ばれる中、家電リサイクル法で規定される4品目以外の中型・小型の家電品の多くは未だ一般廃棄物として処分場に廃棄され回収不能とされているほか、中古品やスクラップとして多くが海外に流出している。
これは、非鉄金属は経済原則に従ってのみリサイクルされるためであり、今の時点で有効なリサイクルの方法や資源戦略を考えておかなければ、今後、日本の産業基盤自体が崩れることが危惧される。また、WEEE指令などの世界的流れからすれば、共存・副産される不要物・有害物の管理も考慮に入れ、物質循環を推進する方向も充分に考慮しておく必要がある。
我々は、日本国内で金属資源のリサイクルをより推進するための新たなシステムを構築、アジア圏をも含む環境保護と、我が国産業に必要なレアメタルを含む金属資源を継続的に確保することを目的として人工鉱床構想を提唱している。資源の定義は、「ある一定の品位を持つものが一定量以上集まること」である。現状の経済環境で資源化が困難な副生物、廃棄物を資源化のためには、一時期保管(Reserve)し、蓄積を行い、将来の原料(Stock)とすることが必要といえる。この目的のために、私的研究会としての検討を実施してきたほか、市場の状況調査や社会実験などを実施して多くの知見を得てきた。
今後、この知見をより広く発信し、副生物、廃棄物の保管と将来の原料化を行うための社会システムと技術の開発を目的とする研究会、「R to S研究会」(Reserve (of Waste) to Stock (蓄積することで資源化する))を設置したい。研究会では、本課題に対して産・官・学のラウンドテーブルとして機能させ、情報を共有するとともに、学生への教育や市民へのコミュニケーションを実施し、資源を有しない我が国の今後の戦略に大きく寄与すべく活動を実施したい。
2004年に東北大学多元物質科学研究所・中村崇教授の私的な会がスタート。手始めに小型電気機器のリサイクルについて、官庁や非鉄メーカー・電機メーカーと話し合いを行いながらリサーチを開始。東北大学をベースに、海外(EUやUSA)の事情の情報収集や、東南アジアでのマテリアルフローについて検討。
2006年には、小型機器の収集に関する社会実験を秋田県大館市に依頼して開始、2008年までに実験範囲を全県に拡充。現在は、環境省・経産省が本試験に興味を示し2009年からいくつかのモデル実験を全国的に開始検討している。
平成21年1月27日
特定非営利活動法人 R to S 研究会